ゴムの不具合対策の考え方




基本は樹脂の射出成形でも説明したように5M(人、材料、機械、金型、条件等)をきちんと分析して対策を行うこと。それと量産中なら変化点に着目することなどの点は変わりません。ここでは個別の不具合減少に対して簡単な説明をしておきます。

①加硫不足

化学反応がきちんと終了していない状態です。外観的にはその部分が膨れたりしますし、カットすると内部に小さな気泡がたくさん見られます。ノズル温度が低い、金型温度が低い、加硫時間が短いという事が考えられます。成形条件を決める際には金型温度と加硫時間のマトリックスを作り実際に成形してみてどこで加硫不足が発生するかを確認し、安全を見込んで金型温度と加硫時間を設定することをお勧めします。ちょっと注意する点として天然ゴムは高温で加硫すると製品の耐久性が悪くなる傾向にあるという点と、加硫戻りといって長時間加硫すると硬度が逆に下がってしまうという現象がみられる点です。

②エアー

材料をキャビティ内に流し込む過程で、エアーをトラップしたまま加硫すると発生します。製品が一部欠けたような状態になったり、小さな気泡を含んだスポンジ状に発泡したような状態になったりする。対策としては型温を上げる、ゲート位置を変更して流れを変える、真空引きをかけるなどがありますが、どうしても安定しない場合はエアベントを立てることが多いです。

③ヒケ

加硫中に材料収縮の影響で材料がキャビティ内で動く(逆流する)ことで発生します。製品がへこんだ状態になり、ゲート部やパートライン周辺に発生しやすいです。また低硬度の材料ではより発生しやすい傾向にあります。対策としては型温を下げる、充填量を少し増やしたり減らしたりする、射出速度を遅くするなどがあるります。またゲート部ならば絞り形状を追加する、パートライン部なら金型の突き当てを調整するという方法もあります。

④パートライン割れ

ヒケと同様の現象で、パートライン部を押し広げると割れていることが確認されます。計量がオーバー気味でだったり、パートのあたりが悪かったり、カエリがあったりすると発生しやすいです。対策はヒケと同様です。

⑤バリ噛み

前の成形ショットのバリが金型に残ってしまい、その残ったバリが次の成形に入り込んだ現象。最終充填部に発生しやすいです。対策としては前の成形ショットのバリを完全に除去することであるが、そのためにもバリが除去しやすい、またはバリが残らない金型構造の工夫が求められます。

⑥焼け

ノズル先端に残った加硫が進んだゴム材料や、射出途中で加硫が進んだゴム材料が製品に混ざることです。外観的にはバリ噛みに似た状態のものや、部分的にただれたような外観になるものなどがあります。使用期限が迫った材料や射出時間が長い時などに発生しやすいです。対策としてはスプルーのヤケだまり(樹脂で言うコールドスラグウェル)を大きくする、型温やノズル温度を下げる、射出時間が長すぎる場合は速度を上げるなどがあります。

⑦ピンホール

脱型時などで製品を引き延ばしたときに小さな穴が開く現象。材料内のカーボンの分散が悪かったり、材料内に小さな異物が入っていた時などに発生しやすい。材料による対策が基本ではあるが、成形では脱型時の製品の過度な伸びを抑えるとか、計量時のスクリュー回転数を上げる(背圧が効く機械なら背圧を上げる)などが考えられます。