成形条件に関してできるだけ簡単に説明してきましたが、ここではもう少しレベルアップするためのヒント的な補足をしてみたいと思います。
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①射出条件の段数について
これまでの説明では2段(ゆっくり入れてスピードアップ)を説明してきましたが、他にもいくつかのパターンがあります。
最後に1段追加して保圧切替位置の直前でスピードを落とす。これは保圧切替位置を安定させる効果があります。車を運転していても、低速のほうがきちんと正しい位置で止まれますよね。それと同じです。
またスプルーランナーが長い時などは最初に1段追加して最初速いスピードで入れ、ゲートのところで減速し、そこからまた増速するという方法もあります。
②保圧条件の段数について
これまでの説明では2段(はじめ高く、その後低く)を説明してきましたが、他にもいくつかのパターンがあります。
バリが気になるときなどは保圧1段目を低めにして、2段目でしっかり保圧をかけて3段目で低くかけるという方法があります。
これは1段目の弱い保圧である程度溶融樹脂のスキン層を強化した後に強い圧力を加えてバリを防ぐという考え方です。
また塗装品など残留応力が気になる成形品では保圧を4-5段使用し、徐々に圧力を下げていくという条件を作ることもあります。
こうすることにより、製品の特にゲート近辺に過大な圧力がかかり続けることを防止して、残留応力を減らすという考え方です。
③パージ(材料替え)について
パージに関していくつかの考え方を覚えておくとよいと思います。
ひとつ目はノズルあたりに残っている材料を置換するには速い速度で少量のパージを繰り返し行うことが有効であるということです。
ふたつ目はスクリューなどに残っている材料を置換するためには背圧を最大にしてパージすることが有効であるということです。
そして温度条件も大事です。基本は前の材料の温度でパージをして材料を入れ替えてから、次の材料の温度にするというのが大事だと思います。またスクリューにこびりついた材料を取り除くために、前の材料をしっかり入れ替えた後に今度は温度を下げてから、ガラス繊維入り材料などのパージ材でパージするという手もあります。
材料替えで困ったときは思い出して試してみてください。
④計量条件について
きちんと計量するという事は射出する材料の量をきちんと管理するという事になり、成形を安定させるうえで重要な要素となります。そのための手段として計量の最後5mmぐらいで回転数と背圧を大幅に小さな値(通常条件の半分以下)で設定してあげることが効果があります。
先ほど射出条件のところで話した内容と同じですが、高速で走っている車より低速で走っている車の方が、決められた位置できちんと止まれることと同じ理論です。
⑤残量について
残量はクッションとも呼ばれ、射出と保圧工程が終了した時点でシリンダー先端に残っている溶けた樹脂の量をいいます。この量はできるだけ小さいほうがよく一般に3-5mm程度にしておくべきだといわれます。
その理由はこの残量は前のサイクルの為に溶かした樹脂の残りですので多いと熱をよりたくさん受けた樹脂が次の射出に多く混ざるという事になりますので、材料の熱劣化に関する不良の原因になることがあります。
ただし射出と保圧の工程はその圧力を、溶けた樹脂を介して金型の中に伝えてますので、残量がゼロになると圧力は伝わらなくなりますので少しは必要という事になります。
ただし成型機の逆流防止リングの調子が悪いとか、軟質材等で残量が安定しない場合は、少し多めに設定するほうが安全かもしれません。
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